研究概要 |
日本国内9県10地区の成人女子231名より陰膳方式による24時間食物検体を得た。各検体の構成食品を秤量し日本食品成分表に基づいてコード化したのち、日本食品無機質成分表の数値を活用してNa,K,P,Ca,Feの5元素の一日摂取量を推定した。さらに各検体の磨砕物の一部を湿式灰化し、プラズマ発光分析装置(ICP)により上記5元素の灰化液中濃度を測定して1日摂取量を実測した。ICP分析に際しては測定の原理から予想されるようにNaとKは相互に測定に干渉し合った。食事灰化液中にはKに比して数倍の濃度のNaが存在するため、Na測定値は実際上Kの共存によって影響されないが、K測定値はNaの共存によって著しく影響を受ける。このためKの測定には先ず5元素の一斉分析を行ったのち、灰化液を一定のNa濃度になるように適宜希釈し、その条件下でKを再測定したのち希釈倍数を乗じて正しいK濃度を得た。これらの測定条件下で得た5元素の測定値を食品成分表に基づく推定値と比較すると、Na,K,CaおよびFeでは両値は一致せず、その差は有意であった。実測値を100とした場合、推定値(231検体の平均値)はNaで118%、Kで115%、Caで109%、Feで130%といずれも相対的に高値となった。Pでは93%と見掛け上低値となるが推計学的にはその差は有意ではなかった。これらの所見はNa,K,Ca,Feでは食品成分表に基づいて摂取量を推定した場合過大評価の誤りをおかす危険性を示している。ただしPの場合にはその危険性は無い。
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