研究概要 |
GVHDの免疫学的機序はすでに明らかにされており,問題はいかにしてこれらを特異的な方法でコントロールするかという点である.本研究では、活性化されたT細胞に特異的に作用し,活性化リンパ球系細胞のみを傷害する特異性の高い抗体を用いることによって,GVHDのコントロールを目指している. これまでの解析で,この抗体の作用条件,誘導する細胞死の形態等の基礎的データが得られている.昨年度に引き続き,この抗体の認識する分子をコードする遺伝子のクローニングを目標にした. 1.活性化T細胞クローンのcDNAライブラリーをOkayama-Berg法により作成し,COS7細胞にトランスフェクションし,RE2抗体を用いて,B. Seed法により,RE2分子をコードする遺伝子のcDNAのクローニングを行ない,1.8kbのインサートを含むcDNAクローン(E3J12)を得た. 2.塩基配列の解析の結果,このcDNAクローンのコードする分子は,α1ドメインに12個の塩基の欠失を認めたが,H-2K^kであることが明らかになった. 3.マウス系統を用いた解析では,RE2抗体の認識する抗原決定基がH-2K^kのみにはマップされなかったこと,β2マイクログロブリンと結合していることなどから,RE2抗体はH-2K^kを含む多種類のクラスI分子と反応していると考えられる. 4.H-2K^k分子に対するマウスモノクローナル抗体ではRE2抗体で見られる様な細胞死を誘導できないことから,H-2K^k分子とエピトープを共有するか,クラスI分子と結合する未知の分子が,RE2の誘導する細胞死に関与すると考えられる.今後この分子の検索が重要と考える.
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