研究概要 |
本研究は肝細胞のオートクリン増殖抑制因子であるアクチビンの作用を抑制することにより肝再生を促進する新しい方法を確立することを目的としている。すでに部分肝切除後の門脈中にアクチビン作用をブロックするフォリスタチンを投与すると肝再生が促進することを見いだして報告している。そこで今回は抹消の静脈中に投与したフォリスタチンの体内での動態を検討し,有効な投与方法を決定するとともに,その方法を用いて抹消に投与したフォリスタチンが果して肝再生を促進することができるかどうかについて検討を行った。放射性ヨードでラベルしたフォリスタチンを投与すると極めて急速に肝臓に集積した。肝臓は体内の臓器の中で最もフォリスタチンが集積する臓器であることが明らかになつた。オートラジオグラフィーによる検討で,肝内のフォリスタチンの多くは細胞外のマトリクスに結合した形で存在することも明らかになった。肝に集積したフォリスタチンは少なくとも72時間は一定であったが,その後時間とともに減少していった。実際,72時間後に第二回目のフォリスタチンを投与するとフォリスタチンの肝内集積は120時間まで高値が持続した。そこで,フォリスタチンを肝切除直後と72時間の二回投与したところ部分肝切除後の肝再生は有為に増強された。これらの結果から,フォリスタチンは静脈内投与により肝再生を促進することができることが明らかになった。
|