研究分担者 |
永岡 明伸 武田薬品工業株式会社, 創薬第一研究所, 所長
古川 美子 岐阜薬科大学, 薬学部, 助教授 (20219108)
古川 昭栄 岐阜薬科大学, 薬学部, 助教授 (90159129)
河野 通明 岐阜薬科大学, 薬学部, 助手 (00027335)
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研究概要 |
本研究は老人痴呆症に関与すると考えられる生体成分の酵素免疫測定法(EIA)を確立し本法を用いて老人痴呆患者の早期診断法として活用することを目的としたものである。その結果, (1)ビオチンと抗体間にスペーサーを導入した複合体を用いることにより6FGFに対するEIA系を高感度化した。本法の感度は約1pg/ml(約0.1pg/assaytube)と以前の系より約30倍高感度であり再現性やヒト血清からの添加回収率も良好であった。ヒト血中には16KDa6FGFのほか高分子量6FGFの存在が認められた。 (2)遺伝子工学の手法で作製したNT-3を抗原として抗体を調製した。 (3)NT-3に対するEIA系は固相に抗NT-3ポリクローナル抗体を結合させ試料中のNT-3をビオチン標識二次抗NT-3モノクローナル抗体でサンドイッチする方法で0.5〜1pg/mlの検出感度で10ng/mlまで測定可能な特異性再現性にも優れた方法を開発することに成功した。 (4)神経栄養因子(NTF)が神経系の構築に如何に関与しているかを知る目的でラット中枢,末梢のNGF,NT-3量の経時的変動について検討し,出生後NGF量は中枢で皮質,中隔,海馬,基底核のレベルが増大するのに反して,NT-3は減少することがわかった。NTFの生合成は神経系の発達時期および部位特異的に制御されていることがわかった。 (5)老人痴呆症(Ab)発症とNGF、NT-3量の変動についてはADと正常老人の脳脊髄液および末梢血中のNGF、NT-3量に有意な差は認められなかった。また脳内の生合成部位である皮質や海馬でレベルの差異は認められなかった。 これらの成果は今後のNTFの研究に多くの示唆を与えるものと考える。
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