研究概要 |
第6染色体に局在するdystrophin homologue DRPのupregulation機構を解明し、DMD治療の開発への道筋を得ることを目的に、(a)DRP gene構造の全解明、(b)DRP特異抗体の開発、(c)DRP遺伝子発現の調節因子特に発現捉進因子の同定をめざした。このうち(a)は本研究開始時点で他の研究者が発表したため、(b)の特異的抗DRP抗体を開発し、まず免疫組織およびmRNAレベルでDRPの組織特異性を検討した。その結果DRPは非常に広範な細胞に発現されており、しかもその局在は骨格筋とは異なり細胞質全域に分布していた。このことはDRPがほとんどすべての細胞で未解明ながら重要な機能に携わっている可能性を示唆した。さらに(c)のDRP発現調節の特異的因子は検討した限りでは同定できず、ジストロフィンの特異的発現因子としてdibutyryl cAMPが同定されたのみであった(BBRC 210:654-659,1995)。その為非筋細胞でのDRP機能が解明されない限りDMD治療に応用は困難であると考え、発現量の多い末梢神経のSchwann細胞をえらび、DRP/dystrophin isoform=Dp116とdystrophin-associated glycoproteins(DAGs)の構造機能解明へと進めた。その結果、骨格筋とは全く異なる関係が判明してきており、1.DRP,Dp116ともに形質膜直下にのみ存在するのでなく細胞質に広く分布し,DAGsとのみ結合するものでない。2.いわゆるDAGsは120kD α dystroglycan,43kD β dystroglycanのdystroglycan complexが細胞外の神経型lamininと架橋をつくる。3.その結合にはα dystroglycanの糖鎖が重要でシアル酸構造が担っている。4.sarcoglycan complexは存在しない。今後のDAGs結合DRPと非結合DRPの機能解明が必要である。
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