研究課題/領域番号 |
05557046
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
平岡 真寛 京都大学, 医学部, 助教授 (70173218)
|
研究分担者 |
長江 英夫 名糖産業株式会社, 名古屋研究所, 主任研究員
永田 靖 京都大学, 医学部, 助手 (10228033)
西村 恭昌 京都大学, 医学部, 講師 (00218207)
|
キーワード | がん治療 / 温熱療法 / 磁性流体 / 誘導加温 / 温熱塞栓療法 |
研究概要 |
血管を通してがん組織に注入した磁性体を外部からの交流磁場によって発熱させることにより、深部がん組織のみを選択的に加温・治療する「血管内ターゲティング温熱療法」の基礎的研究を行った。 磁性体としては既存の大粒子と比較して格段に大きな発熱能を持つ磁性流体デキストランマグネタイト(DM)を用いた。これと油性造影剤リピオドールとの懸濁液および可溶性デンプン微粒子との浮遊液を作成し、DMの発熱能がこれらの配合によって損なわれないことを確認した。 これらのDM含有塞栓材料を用いて、家兎の腎動脈を塞栓し、外部から最大300エルステッドの交番磁場を印加したところ、腎に限局して10℃/10分以上の温度上昇が見られ、腎組織の鉄量測定により、組織1gあたり5mg鉄相当のDMがあれば、現在の磁場強度の下で、有効な加温を行ない得ることが示された。 家兎肝に移植したVX2腫瘍についても同様の実験を行い、有効な温度上昇が得られた。経動脈的に注入されたDMの分布を経時的に調べたところ、現在使用しているDM含有塞栓物質では、注入後数時間以内に肝・脾・骨髄などの網内系組織を中心に、標的臓器以外へDMの分布が見られている。さらにマウスを用いた実験では網内系に取り込まれたDMは1週間以内にその発熱能を失うことが示された。これは、リピオドールや可溶性デンプン微粒子の塞栓効果が一過性であること、また、DMが網内系で代謝されコア部分の磁性が変化することによる。 これらの結果は、現在既に臨床で使用されえいる手技の組み合せによって深部がんの選択的温熱療法の可能性が開けたという点で意義深い。投与剤型について更なる検討を行った上でその臨床応用が望まれる。
|