研究概要 |
1.平滑筋細胞由来遊走因子(SDMF)の精製:ラット大動脈中膜より平滑筋細胞を大量培養し、そのコンディションメディウムを20L採取した。精製過程には、Heparin Sepharose column, Red Sepharose column, TSK-Heparin HPLC column, Superose 6 HPLC columnを用いた。遊走活性はBoyden's chamber法を用いた。最終的に精製されたSDMFは比活性が6048倍になった。SDS-PAGEで単一バンドを示した。SDMFの分子量は58KDであり、メルカプトエタノール還元で53KDとやや低下したが、基本的にはモノマーと考えられた。その等電点は10前後で塩基性を示した。 2.精製SDMFの生物活性:SDMFの平滑筋細胞に対する遊走刺激活性は血小板由来増殖因子(PDGF)のそれの4倍高い活性を示した。SDMFは内皮細胞には作用せず、平滑筋細胞に特異的であった。またSDMFはPDGFとは異なり、平滑筋細胞に対して遊走刺激活性を示すが、増殖刺激活性を示さなかった。 3.SDMFに対するモノクローナル抗体の作成:精製したSDMFを用いて、確立した方法で現在モノクローナル抗体を作成中である。 4.SDMF遺伝子のクローニング:精製SDMFの部分アミノ酸配列を解析し、それをもとにcDNAを作成してプローベとし、現在SDMF遺伝子のクローニング中である。 5.SDMFの発現調節:SDMF活性をもとに、種々のサイトカインや平滑筋細胞のフェノタイプによるSDMFの発現調節を検討中である。
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