1.平滑筋細胞遊走因子(SDMF)の遺伝子クローニング:100Lの平滑筋細胞コンディションメディウムから新たにSDMFを精製し、アミノ酸の部分配列を決定した。SDMF(60KD)は蟻酸による酸分解で25KDと35KDのペプチドに分解された。35KDのペプチドのN末端はブロックされていた。25KDのペプチドのN末端のアミノ酸を解析した結果、10個のアミノ酸が確定し、更に3個のアミノ酸がほぼ確定された。現在これから推定されるオリゴcDNAをプローベとして遺伝子のクローニングが進行中である。 2.SDMFの発現調節:まず平滑筋細胞のフェノタイプによるSDMFの発現の違いをみると、収縮型平滑筋細胞はSDMFを発現せず、合成型平滑筋細胞のみ発現した。合成型のなかでも、内膜由来平滑筋細胞と中膜由来平滑筋細胞ではフェノタイプが違うことを報告してきたが、SDMFの発現でも、前者が後者の1.5倍強く発現していた。また、種々のサイトカインのSDMFの発現に及ぼす影響をみるとTGF-βのみが抑制した。抑制率は1ng/mlで24時間インキュベートした場合約50%であった。 3.SDMFの抑制剤:内因性抑制因子としてやはり多くのサイトカインを検討したが、PDGF-AA、TGF-β、CNPが抑制効果を示した。抑制率は、それぞれ10ng/ml、1ng/ml、10^5Mで85%、65%、40%であった。INF-γも100U/mlで弱い(抑制率10%)抑制作用があった。一方、カルシウム拮抗剤のうち、ニカルジピン、エホニジピンでは10^<-5>Mまでの濃度で効果が無いのに反し、ニフェジピンでは30%の抑制が見られた。さらにHMG-CoA還元酵素阻害剤なども検討中である。
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