研究課題/領域番号 |
05557052
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
北 徹 京都大学, 医学部, 教授 (60161460)
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研究分担者 |
濱口 洋 日本農薬(株), 医薬研究所, 所長
吉岡 秀幸 京都大学, 医学部, 助手 (30231690)
久米 典昭 京都大学, 医学部, 助手 (20252455)
横出 正之 京都大学, 医学部, 講師 (20252447)
土井 俊夫 京都大学, 医学部, 講師 (60183498)
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キーワード | VCAM-1 / 単クローン抗体 / 血管内皮細胞 / malotilate / 抗動脈硬化薬 |
研究概要 |
粥状動脈硬化の発生段階では、まず血中の単球が血管内皮細胞に接着した後、内皮下に侵入し、そこでマクロファージに分化して泡沫細胞を形成すると考えられている。そこで我々は、単球の接着および侵入といった2つの過程を抑制することによる新しい抗動脈硬化薬の可能性を検討している。 まず、単球の内皮細胞への接着に深く関与していると考えられている細胞間接着分子VCAM-1に対する単クローン抗体の、抗動脈硬化薬としての可能性を検討している。ウサギ大動脈の内皮細胞を用いて得られたVCAM-1に対する単クローン抗体のうち、LPSで刺激した培養血管内皮細胞に対する単核白血球の接着を抑制することが、in vitroの実験で確められているものを用いて、WHHLウサギ大動脈の免疫組織染色を行った。その結果、粥状動脈硬化病変部とともに、その周辺の非病変部の内皮細胞が染色された。このことは、VCAM-1が粥状動脈硬化発生のごく初期の段階で血管内皮細胞に発現し、重要な役割をしていることを裏付けるものであり、この単クローン抗体を用いてVCAM-1の細胞接着作用を抑制することにより、粥状動脈硬化の発生を抑制できる可能性を示唆するものである。現在in vivoの系への応用を検討中である。 一方、単球の内皮下への侵入抑制による抗動脈硬化薬の開発については、ある種の癌細胞の内皮細胞下への浸潤を抑制するという報告のあるmalotilateの検討を行った。トランスウェルを用いた実験系で、ヒト臍帯静脈内皮細胞下へのヒト単球由来細胞株の侵入を検討したところ、内皮細胞をmalotilate含有培地で培養したものと加えないものの間で有意な差が認められなかった。このことから単球の内皮細胞下への侵入過程が、癌細胞とは異なる可能性が考えられ、今後これらの細胞の内皮下への侵入の分子機構解明の糸口となる可能性を示唆する。
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