研究概要 |
急性腎不全におけるエンドセリン(ET)の役割の詳細については未だ不明な点が多く、精力的に基礎的検討を行った。ラットの阻血急性腎不全モデルにおいて、血漿ET-1値は虚血後3時間で上昇を認め12時間でピークに達した。ET-1mRNAの腎での発現はこの血漿ET-1の値と同様の時間経過を示すことにより、腎での産生が血漿ET-1の上昇に寄与していることが明らかになった。一方ETの受容体に関しては阻血によりET-A受容体のmRNAは低下、ET-B受容体mRNAの上昇が認められた。これらの変化も3-12時間で認められているので、急性腎不全の予防のためには腎障害発生の早期に予防薬を投与する必要のあることが明らかとなった。また急性のmesangiolysisを起こしてGFRを低下させる馬杉腎炎モデルにおいて、ET1とET3のmRNAの発現亢進を認め、その程度が腎障害と相関し、さらにトロンボキサンの受容体阻害剤で抑制されることも示した。 以上の基礎検討と平行して、ETA,ETB受容体に対する抗体作成とその評価を行った。一般に膜受容体は疎水性が高く、高力価の抗体作製は困難なことが多い。我々もETA,ETB受容体に対する抗体を各々のいくつかのエピトープで試みているが、未だ抗体価が高く、特異性の高いものは得られていない。Western blot法による解析も行っているが、シングルバンドの認識する抗体は得られていない。今後さらに、エピトープの変更、抗体作製方法の変更などを行う予定である。
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