研究概要 |
本研究は急性腎不全でのエンドセリン(ET)の役割の解明を行い、その成果を受けてエンドセリン受容体に対する抗体を作成し、急性腎不全を予防することを狙ったものである。 急性腎不全におけるエンドセリン(ET)の役割について種々の検討を行った。腎臓でのETの発現動態に関してはET1,そしてET3が大切であることを示し、さらに高浸透圧で発現増加することを示した(発表1-3)。馬杉腎炎モデルではメザンギウム細胞にET1とET3の発現が増加しており、この増加はトロンボキサンA2受容体拮抗剤で抑制されることが分かった(Tohoku J Exp Med in press)。腎機能悪化にETが関与していることを示すデータである。さらに急性腎不全モデルとしてウサギにおいて疎血腎、水銀剤投与腎を作成し腎でのETの発現を検討した。どちらのモデルにおいても集合管に著明なET1の蛋白発現の増加を認めた(Exp Nephrol in press)。 以上の結果は急性腎不全においてET系を抑制すれば、腎不全の進展は抑えられるとする、本研究の仮説を証明したものでその意義は高いと考えられる。そこでETAならびにETB受容体に対する抗体を作成しETの働きをブロックする試みを行った。一般に膜受容体は疎水性が高く、高力価の抗体を得ることが難しい。本研究においても様々な工夫を行ったが、受容体は認識する抗体は得られたが、機能を抑えるいわゆる中和抗体を得ることは出来なかった。今後さらに検討が必要であり、抗体以外のアプローチの可能性も考えるべきと思われた。
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