研究概要 |
本年度も引続き、模擬回路内および成山羊を用いた生体内の環境で試作したジェットポンプの性能の評価を行なった。しかし、生体内の環境に適した材質では加工の困難さのため、現段階でジェットポンプの最高性能を引き出すことができず、それぞれの目的に応じた2種類の試作ポンプで評価を行なった。 ジェットポンプの最高性能を評価するために、真鍮製の試作ポンプ(type-1)を用いて模擬回路内で試験を行なった。流体に40%グリセリン水溶液を用いた場合、後負荷40mmHgに対して1010ml/minの駆動ジェット流で3070ml/minの吐出量が得られた。この時、ジェット流速を測定し、溶血に対して比較的安全と言われる10m/secを越えないことを確認した。これらは右心補助装置としては充分満足できる値であると考えられた。 次にジェットポンプの生体内での挙動を評価するため、塩化ビニル,アクリル製の試作ポンプ(type-2)を成山羊に挿入し急性実験を行なった。心室細動下に左心バイパスを装着した状態で、右心系でジェットポンプを駆動することにより、ジェット流量1.8〜2.0L/minの補助に対し左心バイパス流量は2.5L/min増加し、ジェット流による右心拍出量の増加が推察された。また、ジェットポンプの挿入留置方法,不整脈の発生,血栓の形成などの問題点が明らかになった。 以上の結果、小型ジェットポンプは少なくとも右心補助装置として充分な性能を有することが確認されたが、成形の困難さのため生体内では充分な補助流量は得られず、またポンプ留置の問題点から、慢性試験による溶血や組織への障害の程度は評価できなかった。左心補助用,小児用のモデルは右心補助ポンプの応用として考えられるが、現段階では右心補助用ポンプも未完成であり、今後の研究課題として残った。
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