新しい組成の肝保存液の開発に関する研究

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05557076
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 土田 嘉昭 東京大学, 医学部(病), 教授 (80010164)
• 研究分担者: 伊東 充宏 自治医科大学, 助手 ; 杉山 正彦 東京大学, 医学部(病), 医員 ; 河原崎 秀雄 東京大学, 医学部(病), 講師 (60115475)
• キーワード: 肝移植 / 肝保存液 / 細胞外液型電解質組成 / 肝移植,ラット / 肝移植,サル

研究概要

臓器移植の臨床において、その移植成績は、手術の技術的合併症の予防を除けば、移植片である臓器の虚血による障害、保存中の障害、再灌流時の障害をいかに防止しするかにかかっている。1998年、University of Wisconcin液(以下、UW液)が開発されて以来、移植片の保存期間が飛躍的に伸び、夜間の肝移植手術は激減した。しかし、UW液は複雑な組成を持つとともに不安定な成分を多く含むため、冷所において保存する必要があり、また、液が作成されてから使用されるべきまでの期間もきわめて短いなどの欠点を有し、かつ、高価である。このUW液の短所を補いながら、UW液と比較しても保存能において遜色のない新しい安定性のある保存液を開発することが本研究の目的である。本研究では、UW液にかわるものとしてmodified TOM液(以下、mTOM液)を試作し、以下の実験を継続して行った。
即ち、平成6年度、雄性BNラットをdonor,recipientとして用い、donor門脈より10mlのmTOM液、あるいは、UW液を用いて肝を灌流し、これを摘出、摘出肝をそれぞれの液に30時間単純冷却浸漬保存し、recipientに同所性に移植した(n=10、両群)。全実験を通じて、保存後肝湿重量、保存後1時間ATP値・pH値、生存日数、肝組織変化、recipientの体重変化、肝機能検査値、を比較検討したが、両群で有意差を認めなかった。即ち、mTOM液の肝保存性は十分に良好と判断された。
本年度、サルによる同様の移植実験を行った。本年度の実験では、donorサルの肝左半分を切除して、両液のいずれかで環流、donorサルの残りの肝右半分を切除してこれをrecipientとして用いるというものであった。8回の移植実験を行ったが、手技が複雑なためか、長期日数生存のサルを多く得ることはできなかった。

研究成果

• [文献書誌] Tsuchida, Y, et al: "Evaluation of long-term results of Carolis disease: 21 years of ofservation of a family with autosomal deminant inheritance" Hepatogastioenterology. 42. 175-181 (1995)
• [文献書誌] Tsuchida, Y, et al: "Antenatal diagnosis of biliary atresia (Type I cyst) at 19 weekes gestation: Differential diagnosis and etiologic implications" Journal of Pediatric Surgery. 30. 697-699 (1995)
• [文献書誌] 土田嘉昭: "肝内胆管の拡張を示す小児肝胆道疾患の病態とその遠隔成績" 日本小児外科学会雑誌. 31. 701-705 (1995)
• [文献書誌] Kawarasaki, H, et al: "Liver transplantation from living donor" Hepato-Biliary, Pancreatic and Splenic Disease in Children: Medical and Surgical Management. Elsevet(in press).
• [文献書誌] Tsuchida, Y.: "Malignant liver and ble duct tumors" Hepato-Biliary, Pancreatic and Splenic Disease in Children: Medical and Surgical Manegement. Elsevet(in press).
• [文献書誌] Tsuchida, Y.: "Congenital choledocbal cyst: Occurrence of primary intrahepatic stones and prevention of carcinogenesis" Journal of Hepatobiliary and Pancreatic Surgery. (in press).