研究概要 |
原因不明の自己免疫疾患の病因論的な解析を進めていくうえで好適な疾患モデルの確立が急務とされてきた。SSの疾患モデルとしては、従来まで主として全身性エリトマトーデス(SLE)のモデルとしてよく知られるNZB、(NZB/NZW)F1マウス、慢性関節リウマチや血管炎のモデルMRL/lprマウス、、I型糖尿病のモデルNODマウスなど他の自己免疫疾患モデルマウスにSSに類似した自己免疫性唾液腺炎が随伴する事実が明らかにされている。舌下腺粘液細胞分化に異常を来すミュータントNFS/sldマウスに生後3日目の胸腺摘出(3d-TX)を施すことにより唾液腺・涙腺に限局した自己免疫病変の誘導が可能であることからヒト原発性シェ-グレン症候群のモデルマウスとして初めての報告がなされた。即ち、実験群において生後4週齢より23週齢まで顎下腺・耳下腺・涙腺にヒトSSに極めてよく類似した自己免疫病変が臓器特異的に発症し、SSの臨床病態と同じく雌優位の性差が認められた。4週以降週齢ごとに24週まで観察した結果から、耳下腺、顎下腺、涙腺とも無処理ミュータントマウスと比較し3d-TX群において有意に導管周囲性リンパ球浸潤性病変が認められ、経時的に病態増強がみられた。免疫組織学的観察から浸潤リンパ球の主体はCD4陽性T細胞であり、少数のCD8陽性T細胞、B220陽性B細胞、Mac-1陽性抗原呈示細胞を混えていた。自己免疫病変を発症するマウス血清中には1gG型の高力価の坑唾液腺導管上皮自己抗体が検出されることが間接蛍光抗体法にて判明した。MRL/lprマウス自己免疫性唾液腺炎から分離した浸潤リンパ球を調整し、SCIDマウス腹腔内へ移入することにより自己免疫病変のトランスファーが成立する実験システムを初めて確立し,抗CD4,・抗TCR・抗ICAM-1/LFA-1抗体投与による発症阻止効果を明らかにすることができた。
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