研究概要 |
口腔癌を含めた扁平上皮癌から分泌される高カルシウム血症因子は副甲状腺ホルモン関連タンパク質(PTH_rP)である。研究代表者はこのPTH_rPがPTHと同様の生物活性をもつことを証明した。またPTH_rPは細胞の分化や脱分化と密接に関係していることが明らかになってきた。本研究では口腔癌細胞株を用いてPTH_rP遺伝子発現と癌化の関係の解明を試みるとともに、口腔癌の早期診断に対しPTH_rPmRNA合成量の変動が有効であるかを検討する。 (1)口腔癌細胞20種よりPTH_rPmRNA発現量の多い細胞株をスクリーニングした。プローブとしてはM9(DrD.Goltzman,McGill University,Montreal,Canada)を用いた。HSC-3細胞株が最もPTH_rPmRNAの発現量が多いことを見出した。HSC-3細胞株よりtotal RNAを抽出し、RT-PCR法によりヒトPTH_rPcDNAのクローニングを行い、目的のcDNAを得た。 (2)HSC-3におけるPTH_rP遺伝子発現に対する1,25(OH)_2D_3及び血清添加の効果を検討した。血清添加によりPTH_rPmRNAの合成量は著明に増加した。更に、血清存在下及び無添加の両者において、1,25(OH)_2D_3はPTH_rPmRNAの発現を抑制した。 (3)口腔癌組織及び前癌病変の組織の採集は順調に進行しており、次年度から、これら組織のPTH_rPmRNA量の測定を行う予定である。 今後、PTH_rP遺伝子発現の変動による口腔癌早期診断法の確立をめざす。また、PTH_rP合成量の変動とcollagenase遺伝子発現量との関係を検索することにより、PTH_rPによる骨吸収機構の解明を行う。口腔癌進行による骨破壊現象を明らかにしてゆくつもりである。
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