研究概要 |
1.ヒト唾液腺癌細胞(HSG)を5-azacytidineで処理して、神経細胞に分化誘導したHSG-AZA11細胞を分離・樹立した。このHSG-AZA11細胞は、豊富なニューロフィラメント束、粗面小胞体とチュブリンのαとβ鎖を発現しており、神経細胞に近似した表現形質を保有している。また、dibutyryl cAMPと反応して神経突起を形成し、シナプトフィジンとニューロン特異的エノラーゼを発現することを明らかにした。このHSG-AZA11細胞はcAMPを介するシグナル伝達機構に関与する分化誘導剤の検索に有用な細胞になることが示唆された。2.HSG細胞を5-fluorodeoxyuridine monophosphate(FdUMP)で処理すると、筋上皮細胞に分化誘導され、apoptosisの惹起されることを示唆する実験結果を得た。さらに、HSG細胞にはFdUMPの膜受容体の存在することが示唆された。2.HSG細胞を5-azacytidineで処理して分化誘導して得た腺房細胞(HSG-AZA3)を3,4-dihydro-6-[4-(3,4-dimethoxybenzoyl)-1-piperazinyl]-2(1H)-quinoline(Vesnarinone)で処理すると軟骨細胞に、22-oxa-1α,25-dihydroxyvitamin D_3で処理すると骨芽細胞に分化誘導されることを明らかにした。3.HSG細胞をDNAトポイソメラーゼII阻害剤であるエトポシドで処理すると、α-smooth muscle actin,ミオフィラメントを発現し平滑筋細胞に分化誘導され、apoptosisの惹起されること明らかにした。4.最近、我々は口腔小唾液腺由来と考えられる腺様扁平上皮癌細胞(TYS)を、5-fluorouracilで処理すると腺房細胞に分化誘導され、さらにapoptosisの生じることを明らかにした。このTYS細胞は今後、分化誘導剤の検索に有用な細胞になるものと考えられる。
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