超原子価アルキニルヨードニウム塩やアルケニルヨードニウム塩の抗菌活性を調べ、化学構造と活性の相関を基盤とする、新しい抗真菌剤の分子設計を実施して、抗真菌化学療法剤を開発することが目的である。平成5、6年度には、著者等の開発した反応を活用して、アルキニルシランからアルキル側鎖の長さの異なるアルキニルヨードニウム塩を合成し、その抗真菌活性を調べてアルキル側鎖の最適化を検討したところ、アルキル側鎖の炭素数が6〜8のアルキニルヨードニウム塩がカンジダ菌やクリプトコッカス菌等の酵母状真菌に対して最も強い抗菌力(MIC : 3.13-12.5μg/ml)を示すことを既に明かにしている。 本年度は、マウス実験的カンジダ感染モデルを用いて、アルキニル(フェニル)ヨードニウム塩のin vivo抗菌活性を調べた。サブロ-寒天平板にて37℃で約48時間培養したCandida albicans TIMM0239を、3日間反復投与試験では2.2×10^6cfu/マウス、単回投与試験では1.8×10^6cfu/マウスを、ICR系雄性マウスに静脈内注射した。被検化合物は50mg/kgを単回、あるいは20mg/kg/dayを3日間腹腔内投与した。菌感染後12日間のマウスの生存率を観察して、その生存率の推移で効果を判定した。系統はMann & WhitneyのU検定を用いた。 腹腔内50mg/kg単回投与試験試験において、アルキニル(フェニル)ヨードニウム塩(1)、(2)、(3)の投与群では、いずれも未治療対照群と比較し、その生存率は低かった。この投与用量では毒性が現れていると考えられる。腹腔内20mg/kg/day3日間反復投与試験試験において、アルキニル(フェニル)ヨードニウム塩の投与群では、いずれも未治療対照群と比較し、その生存率に差は見られなかった。また、比較薬剤のイミダゾール系抗真菌剤ketoconazole (KCZ)投与群との生存率の比較では、いずれの化合物もKCZより劣っていた。
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