研究概要 |
天然制限酵素のDNA塩基認識よりも広い15〜20塩基対程度の非対称配列を認識して切断する人工制限酵素の創製は,ヒトゲノム解析に重要な手段を提供する。人工制限酵素の分子設計として,3つの亜鉛フィンガーモチーフを有する転写因子Sp1のN末端側にDNA切断部位(グリシル・グリシル・ヒスチジン;GGH)を導入することを計画した。遺伝子化学的に合成したSp1・GGHの亜鉛フィンガー部分にZn(II)を,GGH部位にNi(II)をそれぞれ配位させたのち,酸化剤の存在下,DNA切断反応を検討した。その結果,Sp1・GGHはDNAをGCボックス下流の1ヵ所で特異的に切断することが明らかになった。その切断は,グアニンの多い鎖ではGCボックスから5塩基下流のシトシンで,シトシンの多い鎖ではGCボックから3塩基下流のシトシンでそれぞれ認められた。Sp1・GGHはGCボックス中の10塩基対を認識し,天然制限酵素のように1ヵ所で特異的に切断するので,認識配列の異なる亜鉛フィンガーをタンデムに並べることにより,任意の配列を認識・切断する人工制限酵素の開発に大きく前進することができたと考えられる。
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