研究概要 |
本研究では近年における土壌の侵食等の地球表面の水文侵食環境の変遷を明らかにするために,湖沼堆積物の物理特性を利用し,個々の湖沼の堆積速度・堆積量の経年変化を数値化し,湖沼間の堆積速度・堆積量の対比を迅速に行い得る手法の開発を試みる.この手法は侵食の指示者である堆積物の粒度組成の変動と堆積物のある種の物理特性と磁場環境を反映している磁化特性の変動そして絶対的な年代の指示者としての放射性核種の変動およびそれぞれの資料の数値処理法の組合からなり,この手法が確立されるならば湖沼における比較的短期間の堆積速度・堆積量の推定が,従来の推定法に較べて大量の試料に対してはるかに容易にそして迅速に行えるようになる. この観点から,湖沼堆積物の編年手法の開発に関して,今年度は以下のことを行った. 1.測定装置の改良;水分を多量に含んだ固定表層部のコア試料を採取した状態で測定可能な測定装置を製作した. 2.湖沼堆積物の採取・分析;日本海側の3湖沼にて底堆積物の採取を行い,粒度分析や磁化特性等の物理分析を行った. 3.対象湖沼近辺の水文特性の分析;金沢地方気象台の気象資料を入手して侵食に寄与している水文特性を検討した. 4.絶対年代を刻む資料として放射性核種の^<137>Csの分析を行い,年代軸を導入した. 帯磁率・粒度等の物理量を利用して各湖沼間の堆積物の対比が可能になることがわかり,堆積速度等が容易に推定できることが明らかになった.
|