研究概要 |
本年度は、光多重コンピューティングシステムの最適設計法の基礎を確立するとともに,光基本ゲートならびにこれを用いた並列多重加算モジュールを試作し,その性能評価を行った. 1.まず,本研究代表者が提案する3種類の光集合論理ゲート:和集合ゲート,補集合ゲートおよび変換ゲートを用いて光多重コンピューティングシステムを系統的に設計する方法を確立した.この結果,配線量が最小になるように,仕様として与えられたデータ依存グラフの構造を3次元空間に射影することにより,最適構造の回路が導出できることが明らかになった.本設計法に基づき,特に,並列加算器,並列乗算器などの設計を行い,配線の減少率と波長数の関係を評価した. 2.上記の光集合論理ゲートの実現のための鍵になる多波長分光用光電子集積回路(フィルタ・ディテクタ)を試作し,その性能評価を行った.これは,多重化された光を波長ごとに分解し,その有無を電気信号に変換する素子であるが,従来の半導体プロセスのみでは製作が困難であることが判明した.このため,(1)標準プロセスによるフォトダイオードおよび電流増幅回路の集積化(配線工程を除く),(2)集積回路上への誘電体多層膜フィルタの堆積,(3)アルミ配線工程,という3段階のプロセスで試作を行った.さらに,試作したチップを用いて,波長670nmおよび830nmのレーザ光の識別に成功した. 3.誘電体多層膜フィルタ,光ファイバ,レーザダイオード,フォトダイオードおよび電子回路部品を組み合わせて光多重コンピュータの3種類の光集合論理ゲートを製作した.また,これらの論理ゲートを用いて並列多重加算モジュールを構成し,これが約1MHzの動作周波数,100mWの消費電力で動作することを確認した.
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