研究概要 |
本研究では,人間の思考は図や文章,式などを書くことによって育まれるとの認識に立ち,手書きを基本とする人間と計算機の対話方式を確立することを目的としている.インタフェースの設計理念として,発想段階で筆記しているユーザにとって筆記過程で発生する誤認識が人間の思考を中断させることから,認識処理の表示は必要になるまで遅らせる怠け認識(lazy recognition)を1990年より提案している.1994年度は本試験研究の2年目にあたり,次に列挙する成果を得た. (1)手書きインタフェースを採用した計算機環境の設計と実現:電子的な「紙」の上で,文字を筆記し,必要に応じて認識させる文章創作環境を設計・試作した.対話技法として,ペンジェスチャを適所に利用した.さらに,思考を妨げないインタフェースとするために,怠け認識方式を採用した. (2)オンライン手書き文字認識のための文脈後処理の開発:JIS第一水準文字の文字による日本語文章列の自由筆記オンライン文字パタンに対し,約90%の文字パタン認識率を95%程度に高める文脈後処理を開発した. (3)文章形式の自由筆記オンライン文字パタンデータベースの収集:これを共通の基準にすることによって,オンライン文字認識方式の客観的評価が可能になり,この分野の研究の進展に寄与するものと期待できる. これらの他に以下の研究項目で成果を発表した・ (4)ペンとマウスの操作性比較,(5)文房具メタファを操作する作図システム,(6)文房具メタファの自動位置合わせなどの調整機能の実現,(7)手書きパタンオブジェクトデータベースの研究,(8)手書き数式入力とその修正,整形のインタフェースの実現,(9)ペン入力による動画作成のためのインタフェースの試作,(10)ペン入力による作表エディタの試作,(11)ペンの囲みによる対象の包含判定の高速アルゴリズムの実現
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