研究概要 |
本研究では,人間の思考は図や文章,式などを書くことによって育まれるとの認識に立ち,手書きを基本とする人間と計算機の対話方式を確立することを目的とした.その基本理念と必要な処理方式についてはすでに開発しており,本年度は本試験研究の最終年度にあたることから,次ぎに列挙する成果を得た. 1.手書きインタフェースを採用したデスクトップ環境の設計と評価 文書作成などの創造作業を行うことを念頭に,手書きインタフェースによる計算機環境を設計・実現した.この環境では,文書作成に用いる実現の道具を仮想化したメタファを提供している.また,対話技法として,ペンジェスチャを適所に利用した.さらに,思考を妨げないインタフェースとするために,怠け認識方式を採用した. 2.ペンとマウスの操作性の比較評価 既存のペンコンピュータでは,ペンを単にマウス代わりとして用いている.ペンの特長を活かした対話技法を開発するために,ペンとマウスの操作性を比較評価した. 3.オンライン手書き文字パタンデータベースの試験公開 ペン入力の実用化を考え,認識方式の研究に資することができるためには,現実的な字体変形が加わった筆跡パタンを大量に収集する必要がある.また,今後の情報処理機器のパーソナル化を考えると,個人ごとに文字パタンを相当量収集する必要がある.そこで,個人ごと,文章筆記,字体制限なし,などを特徴とするオンライン手書き文字パタンデータベースを作成し,80人分×12,000文字パタンを収集し,試験公開を開始した.共同利用の大規模オンライン手書き文字パタンの公開は我々が最初である.
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