研究概要 |
我々はこの数年来,属性文法に基づくコンパイラ生成系の研究を進めてきたが,今やその成果をまとめ,公開する時期に至ったと判断した. 平成5年度は,そのうち次を実現した. 1.我々の開発した1パス型属性文法に基づく生成系であるRieは,GNU Bisonをベースに,C言語で実装したシステムである.Rieについては,先日junetのニュースグループで初期版を公開したが,マニュアルの整備,大小の例題の整備,インストール法の解説,寄せられたコメントやバグ情報への対応などを行い,GNU規約に基づいたフリーソフトウェアとして改訂版を公開した.まず1.0.3版を国内向けに,続いて1.0.4版を世界的なネットワークであるusenetのニュースグループcomp.compilersへ公開した.その結果,1.0.4版は米国を中心に約100サイトにコピーされた.Rieの開発や保守の作業工数,公開に対する反応などについての考察を[参考文献1]に発表した. 2.Junは,木の上の属性文法に基づく,コンパイラのバックエンド用の生成系である.Junは,属性の依存関係に循環性のある場合も扱えることが特徴で,これにより最適化器の定式化が可能になった.Junについては,初期版の限界が明らかになっていたので,入力記述の仕様を改訂し,継承属性と合成属性とを対称的に扱うよう生成される属性評価器の形を変更し,全面的な書き直しを行った.実装言語はCommon Lispである.
|