本研究は3つの基本検討事項に沿って進めることを研究計画書で述べた。 1.の「設置角度」については、柵を高盛土の路肩に垂直に設置した場合、平地の場合よりも雪が巻き上がり、却って視程が悪化することが分かった。特に幅員25mの高速道路を想定した道路モデルでは、下流側の2車線に大きな剥離領域が形成され、防雪柵が全く役立たない。また設置角度を変化させた時の流動パターンから、柵を垂直から30度傾けて設置した時に不十分ではあるが、最良の吹き払い効果が得られた。3.の「断面形状の工夫による吹き払い効果」については、曲線的な断面形状を用いて気流を路面付近に集中させて、吹き払い速度を向上させても、柵の背圧が下がって剥離せん断層の巻き込みが強まり、下流での気流の路面からの巻き上がりも強くなった。さらに防雪柵メーカーの技術者との意見交換から、柵は制作と設置における施工を容易にする目的で、これからは垂直に設置する単純な構造にして行きたいことも分かった。そこで本年度は、現行の基本設計を大きく変えることなく、柵に通常4枚ある防雪板の個々の設置角度を検討して性能の向上を計った。また、メーカーからは視界を改善する意味からも、一部に有孔板を使いたいという要望があり、検討の結果一番上の防雪板に有孔板を使うことによって、剥離せん断層における強い速度勾配を弱めることで、2.の「剥離せん断層制御」が可能ではないか考えた。このような観点から降雪期には実際の雪を用いた屋外の風洞実験において部分的に有孔板を用いたモデルの個々の防雪板の設置角度を色々と変えた実験を行なった。その結果、標準の防雪柵の一番上の防雪板を有孔板に取り替えるだけで視程が大幅に改善されることが分かった。また、高盛土においては、個々の防雪板の設置角度を上から順に25度、30度、40度、50度としたモデルにおいて下流側車線までの広い範囲で視程が最も改善されることが分かった。
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