吹雪現象は、雪が風によって運ばれるという流体工学的な現象であるが、従来型の防雪棚は流体工学的なセンスに基づくことなく考案されているため、流体工学的センスに基づいて高性能な防雪棚を開発した。剥離せん断層の巻き込みが路面付近の雪を巻き上げることから、剥離せん断層を小さな平板や有孔防雪板を用いて拡散させる「剥離せん断層制御法」と、風の運動量を有効に利用した「翼形状防雪板制御法」の二つのものを基本的なタイプとして研究を進めた。その結果、有孔板を用いたタイプにおいて大幅な視程の改善が得られ、翼形状の防雪板タイプにおいては棚の背後の流体の死水領域が除去され、より一層の防雪効果があることが分かった。一方、北見工業大学においては水路や風洞実験が主体であり、やはり実験によるスケールモデルであることと、十分にコントロールされた環境下であるため、実際のフィールドでの実物大の棚による実験が不可欠である。そこで、北海道内の防雪棚メーカーの一つである三英鋼業(株)の協力を得て、実物大の試作モデルを実際の道路に設置していただき、効果の検証を行なった。翼形状のタイプは平成6年度に考案したものであり、また形状も複雑なために実地へのモデル設置は行えなかったが、5年度に考案した有孔板による剥離せん断層制御タイプのものは東北地方および北海道において設置することができた。関連行政からの許可の問題もあり、設置が3月に入ってしまい十分な観察期間が得られなかったものの、付近に設置された従来型のものよりも効果が見られるとの報告を得ている。メーカーの協力のもと、この有孔板タイプと翼形状タイプについて、来冬は本格的に実地テストを行なうとともに、関係行政機関にも高性能防雪棚の普及を働き掛けて行く考えである。従って、本研究の実用化への目処は十分に立ったものと考える。
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