研究概要 |
都市海岸防災を進める上で,生体防御とのアナロジーの観点から,基本的に(1)氾濫水の伝播・拡大を阻止する,及び(2)氾濫災害が発生しても速やかな回復を図る,という考え方を採用する.(1)においては,気象災害に170年という明瞭な周期性があり,それ以上の再現期間を取っても,エル-ゴート性の破綻から推定値に意味がないということと,現状では高潮の潮立や津波の波高の上限値を設定することがほぼ不可能であることのため,防災施設であらゆる規模の浸入を完全に防ぐことできないと結論した.(2)については,現在の都市構造そのものが市街地の浸水を前提として計画されていないので,防災よりも減災を考え,浸水した場合の対策と復旧方法を考える方が現実的だからである.つぎに,高潮・津波災害について,堤防方式と堤内地の地上げの組み合わせによる3段階の防御方法と地震災害での地域的な3段階の浸水対策を示した.さらに,臨海低平地における10通りの起こり得る複合被災過程を明かにした後,津波来襲による港湾での新しい被災形態として,埋め立て地背後の狭海域での津波の重ね合わせによるバース水深の不足を取り上げた.一方,高潮と津波氾濫では,地下鉄や地下街への浸水が極めて危険であることを数値計算で明らかにした.それによれば,ほぼ水平に近い地下鉄の軌条に沿っての氾濫水の伝播では,先端の伝播速度が比較的遅く,それが各ターミナルとそれに接続する地下街に到達するまでに,避難の時間的な余裕がある場合も起こるが,もし,地下連絡口と氾濫決壊口や越流箇所との矩離が短く,しかも地下連絡口の数が多ければ,地下空間の水没が極めて短時間に終わる危険性を明らかにし,幾つかの対策が不可欠であることを示した.
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