研究概要 |
都市災害の人的被害の推定方法として,ここでは,都市を生き物と捉えて,生体防御と都市防御とのアナロジーが成立すると仮定して検討した.その結果,両者の構成要素や諸現象がよく対応することを見いだした.さらに,現行の都市防災対策では,都市の生命線であるライフラインに対する防災対策において,異常事態の発生検知網や現場における即応的な復旧体制に一層の改善が必要との結論を得た.また、マクロ的な視点から,都市の許容地震エネルギーの評価や許容氾濫水量を評価するという戦略的な検討も必要なことを指摘した.これは,従来のような都市インフラストラクチャーに関する信頼性解析のみならず,防災マネージメントや都市計画段階での防災アセスメントの必要性がとくに重要であるに関係している.つぎに,都市災害発生危険度の指標として都市の人口密度と歳入額の組み合わせによる関数を提案し,これをわが国の大都市に適用することを試みた.さらに,これらの方法を阪神・淡路大震災に適用した.その結果,神戸市の人的被害が甚大であった6区,西宮市及び芦屋市を対象にすれば,計算による最大死者数が8,450名となり,今回はその半数が犠牲になったと考えられた.残りの半数の犠牲者については,その被災シナリオが隠れている.そこで,時間的な犠牲者数の変化を求めるために,朝,夕のラッシュアワ-,ビジネスアワ-,夜に直下型地震が発生したときの被災シナリオを考え,死者数を求めるためにどのような情報が必要かについて検討した.これに基づいて,最終年度に詳しく検討し,ここで提案した方法の適用性を明らかにすることになった.
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