地球上の水循環の研究は国際世界気候プロジェクト(WCRP)の重要サブプロジェクト、地球規模での水とエネルギー研究プロジェクト(GEWEX)の一貫として研究が行われようとしている。我々九州大学グループでは、いまだ不明のアジアモンスーンの降水機構の解明を行うことになっている。降水機構の研究には雲内の降水粒子の空間分布の情報が必需であり、現在直径0.5mm以上の粒子の映像の情報が得られる降水粒子ビデオゾンデを開発している。しかし、降水機構の完全な理解には初期成長過程の検知が必需であり、そのためこの試験研究では新しく雲粒子ビデオゾンデを開発することにした。装置の原理はポンプで小粒子フイルム上に捕捉、高倍率のレンズを通してビデオ写真を地上に伝送するものである。 雲粒子ビデオゾンデの試作では2つの大きな問題があった。1つは適度な粒子採集方法の開発と、高倍率での映像の鮮明化である。前者では、雲粒空間濃度が高いことから、そのままでは捕捉面が水で濡れ、Overfloodの現象が起こる。そのため透明なフイルムを雲粒の捕捉中、短時間高速で走らせ、その途中でフラッシュをたいて映像を止めることにした。一方、映像を鮮明にするため高倍率レンズをフイルム直下に置くとともに、空気の吸引をフイルムの両サイドで行うことでフイルムの‘たるみ'を無くした。現在、試作品が完了したので、次年度は低温室内で雲粒や氷晶の雲を作り、動作テストを行うとともに、実際に雲粒子ゾンデを雲内に飛場、テストを行う予定である。
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