地球上の水の循環の研究には、地球上の各気候圏特有の降水機構の知見が必需である。しかし航空機による強い降水域への飛行の困難さから、降水機構の研究は大きく遅れている。我々のグループでは新しくビデオゾンデを開発、気球により雲内に飛揚、降水粒子の空間分布の観測を行っている。ビデオゾンデはビデオカメラを内蔵しており降水粒子が赤外線を遮るとフラッシュがたかれ、降水粒子の映像を停止させその画像を地上に1680MHzの搬送波で送信するものである。しかしこの方式では直径0.5mm以下の粒子の情報は得られない。雲粒の粒度分布は“温かい雨"型降水による雨滴形成についての知見を与えるとともに、小氷晶の空間濃度は“冷たい雨"型降水の効率を決める。又後者は上層雲での放射効果に大きく寄与する。このプロジェクトでは降水機構・放射の研究に重要な降水小粒子を観測を可能にするセンサーの開発を目的とした。このセンサーの基本は粒子を吸引ポンプでフィルムに捕捉しそれを小型顕微鏡で拡大、その映像を送信するものである。 プロトタイプの雲粒子ゾンデを試作し、1台雲内への飛揚を行った。飛揚の結果は画像送信は成功したが吸引により雲粒があまりにも多くフィルム面に付着、オーバーフローしてしまった。そのため粒子捕捉に関して更に改良することにした。アイディアは、捕捉フィルム面を粒子吸引中走らせることである。しかも画像を停止させるためフラッシュを作動させた。定温室内での実験では良好な結果を得た。実験は雲粒・氷晶捕捉のためのポンプの吸引容量、粒子取り入れ口の大きさ、捕捉フィルムの速度、フラッシュの露出時間、粒子識別最小直径、映像発信状況についてであった。 来年度は低温室内でのテストを更に繰り返し、背振山山頂での天然の雲でのテストを行い、その結果を気象学会に発表、報告書にまとめる。
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