この研究は豪雨機構の研究のため豪雨雲内の降水粒子の分布を全降水粒子について求められるビデオゾンデを開発することを目的とした。直径200μmより大きい降水粒子についてはフラッシュ方式を採用、降水粒子が赤外線束を遮るとストロボが作動、フラッシュがたかれ、粒子映像を静止させてビデオカメラで撮影、1680MHzの搬送波を変調して地上に送信するものである。一方、雲粒子の粒度分布の測定のため新しく雲粒子ビデオゾンデの試作を行った。このビデオゾンデの原理はポンプで外気を吸い込み、透明なフイルム上に雲粒を捕捉、顕微鏡で撮影、CCDカメラの映像を地上に送信するものである。この雲粒子ビデオゾンデの特徴は、フイルムを流しながらフラッシュを作動して雲粒の映像を地上に送信するもので、フイルムの固定による外気の吸引では雲粒が次々と重なり見かけ上大きな雲粒が観測されるがこのフラッシュ方式の採用により雲粒粒度分布の測定誤差を最小限にすることが可能となった。室内実験でのビデオゾンデのテスト後、平成7年11月15日から1ヶ月間オーストラリア・メルヴィール島で行われたMCTEX国際プロジェクトに参加、降水粒子ビデオゾンデ16台、雲粒子ビデオゾンデ2台を雲内に飛揚することができた。ここでの雲はHectorと呼ばれ雲頂は18kmにも達し、強い雨と雷は想像を絶するものであった。我々のビデオゾンデで初めてHector雲の降水粒子の測定が行われ、氷晶域の異常な活発化、霰の融解に伴う雨滴のリサイクル、それに伴う大凍結氷の形成等が明らかになり10個/cm^2にも達する多くの氷晶数は雷活動の活発さを説明するものであった。 全降水粒子ビデオゾンデの試作とこれらの飛揚によるHector雲の降水粒子の測定は当初予定していた降水機構の解明に大きな成果があった。
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