研究概要 |
東北6県ならびに新潟、富山、福井から地すべり災害資料を収集し、その発生時期や各県の特徴的巨大地すべりを調査した。その結果、地すべりは北陸で4月に東北で5月に多く発生し、面積的には7〜8割が融雪期に発生することを確認した。特に巨大地すべりは豪雪地帯に位置し、第三紀層の地質特に泥岩、凝灰岩等で発生し、そこに概ね地すべり粘土を介在する。その粘土は水と反応して膨潤性を示すスメクタイト類が多く、その膨潤現象が地すべりに関与していると考えられたので、粘土の膨潤性や力学試験を行い、その挙動に関する構成式を導いた。さらに、融雪水量が増大する時期に地すべりが顕著な動きを示していたことから、地すべりのレオロジーモデルを考案し、例えば秋田県の谷地地すべりの発生に関する地すべり粘土の粘着力や内部摩擦角がどのくらいであるかその限界値を推定することができた。 一方、建設省が指定した各県の地すべりの危険箇所について地域的特徴を調べたところ、危険度は雪の要因を考慮するとより明確になることを明らかにした。今回の解析ではこれを含む8つの因子を採択して危険度を再検討した。その結果、個々の地すべり地に得点が付与され,危険度の高いところはいずれも特別豪雪地帯に集中し、地すべり対策にとって重要なランク付けのハザードマップを秋田、山形、宮城の3県について作製することができた。 これに対し、現在融雪期に動きのみられる秋田県東鳴瀬村谷地地すべりを選定して、地すべり冠頭部にテレメタリングシステムを設置し、降雪強度等の観測を行い、データ回収に一応の成果が得られた他、降雪強度に地域性があるのでその補正係数を考案した。 また、地すべりをリモートセンシングの観点より研究するため、ランドサットMSS画像を1979年〜1987年にわたって解析した。その際、バンドを変えるに当たってプログラム改良を行い解析を試みたが、雄物川流域ではこの期間での顕著な地すべり挙動は見当らなかった。 さらに、融雪河川水質分析から融雪期には土壌・地質を起源とする水質に特殊な変化がみられるが,その影響は長期にわたり継続していることを示した。
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