レーザー光と電子ビームとの相互作用は、今までコンプトン散乱として知られている。しかしこの相互作用は、極めて断面積が小さく、利用性に乏しかった。このため極めて強いレーザー光が必要と考えられていたが、未だ要望に沿う技術は開発されていない。われわれは、レーザー光を蓄積するという新規技術に着目し、これを用いたコンプトン散乱による放射光源に関する研究を行ってきた。 光蓄積に関する研究においては、〜10^5倍までの蓄積に成功している。W級レベルのCW Nd:YAGレーザーを用いてこの実験は行われ、レーザーのモード制御やスペクトル形状の効果、また光蓄積空胴の安定化の研究が進められた。入射レーザー発振キャビティの精密な制御により、十分安定に上記の蓄積値が達成できた。 この光蓄積空胴に電子ビームを入射し、相互作用実験を行った。空胴中での真空度、蓄積安定性に対し電子ビームは大きな影響を(熱的、放射線的)与えることが判明したが、これら項目を実験的に制御し、最終的に相互作用研究を遂行した。 この結果光蓄積が行われ、これに見合う相互作用の増強が起こっていることが確認できた。また放射光(散乱光)のスペクトルも、理論的予測に整合している。 このような方式での放射光についての利用に対する調査を行った。これを用いた核変換を行うことが考えられ、この概念についての議論を行い、将来的なシステムについて検討した。
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