研究概要 |
本年度は主な研究成果は、回転プラズマに発生する巨視的不安定性とその非線形発展についてイメージ計測、反磁性計測など多くの診断法を駆使して詳しく調べた結果、不安定性の物理機構が明らかになった点である。 1.実験は一様磁場の一端に設置した同軸プラズマ銃からAr回転プラズマ(密度〜10^<14>cm^<-3>、軸方向速度2×10^4m/s、回転角度速<10^6rad/s)を磁場に沿って射出し、5cm下流の平板ガラスターゲットに当てる。そして、ターゲット上のプラズマ像を高速度フレーミングカメラで撮影する。さらに、磁気プローブでプラズマ中の反磁性磁場を測定する。磁場強度を0.3,0.6,0.9,1.2,1.8,2.4,3.6kGと変化して実験を行った。 2.実験結果 低磁場領域(0.3〜1.2kG): 磁場なしでは不安定性の発生はみとめられなかった。磁場0.3〜0.6kGでは、反磁性効果でプラズマ内部の磁場が打ち消され(ベータ値が1以上)完全反磁性空洞が形成された。この時プラズマほとんど回転せず、むしろ磁場を横切る膨張が顕著であった。膨張の過程で、プラズマ表面にm=30〜40の径方向ジェット(フルートモード)が現れ、ほぼ10^4m/sの一定速度で成長した。この不安定性はプラズマの膨張の過程で発生しフルートモードであること、また波長が密度勾配長にほぼ等しいなど、Ripinらがレーザー生成膨脹プラズマで観測した特徴と一致している。従ってLLRレイリー・ティラ-不安定性がジェット形成の原因であるとと結論できる。 強磁場領域(2.4〜3.6kG): 強磁場ではプラズマの膨脹は小さく(ベータ値が1以下)、むしろθ方向にJ×B駆動力が働いてプラズマは角速度〜0.8×10^6rad/sで高速回転し、回転プラズマとなる。射出された直後にはプラズマの表面にm〜20の径方向ジェットが一時的に現れる。その後、径方向ジェットはプラズマの回転とともに合体融合し、m=2の大規模なスパイラルジェットに発展する。m=2スパイラルジェットは一旦形成されると放電時間中(この間プラズマは上記の角速度で回転している。)持続するという興味深い特徴を示した。ガラスターゲットを取り除くm=20×m=2への変化が認められず(たぶん、長時間で変化している)、一方プラズマ近傍に中性ガスを注入すると、銃から射出後即座にm=2となった。この間、角速度はほとんど変化いていない。従って不安定性の機構は、Netzlinらが浅い回転流体中で観測した様に、回転速度のシア-に起因するケルビン・ヘルムホルツ不安定性に遠心力効果が重畳した遠心力不安定性と考えられる。なお、プラズマ中で遠心力不安定性が観測された報告は今回が初めてである。
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