研究概要 |
本研究の目的は回転プラズマの遠心力を利用したプラズマ遠心分離法の特性を詳しく吟味し、コンパクトな同位体分離法としての実用化の可能性を探ることであった。そのため、新たに同軸回転プラズマ銃を考案し、2種類の放電方式、ガスパフグロー放電方式(GII実験装置)および真空放電方式(GIII実験装置)によりそれぞれ、希ガス回転プラズマ(Ar,He)および金属回転プラズマ(Zn/Cu,Cu,Mg/Al,Ag)を生成した。次に実験理論の両面から回転プラズマの駆動特性、回転プラズマの平衡と不安定性、粒子輸送と遠心分離係数を検討した。その結果、プラズマ密度、速度の磁場強度、放電電流に対するスケール則を確立した。特に回転速度は磁場強度に比例し放電電流に反比例するので、大電流パルス放電によるプラズマ生成よりもむしろ超伝導マグネットを用いた強磁場運転のほうがメリットが大きいことがわかった。次に、高速回転プラズマの表面に巨視的不安定性が成長し、特異なスパイラル構造に発展することを発見した。プラズマ遠心分離の性能向上のためにこの不安定性は是非とも解決する必要がある。回転プラズマと残存する中性ガスとの間に強い相互作用があると、プラズマ境界付近に速度シア-が発生し、遠心力不安定性が発生する。スパイラル構造はこの遠心力不安定性の結果である。実験ではガスの種類、圧力等を変化させて不安定性の成長度、振幅、モード構造の変化等を詳しく調べた。また、予備的ながら約1テスラ以上の磁場強度でイオンが十分磁化するようになると、不安定性が安定化されることがわかった。最後に、Zn/Cu混合プラズマを用いた遠心分離実験で濃縮率9を得た。この値はガス遠心分離法の0.1と比べると約100倍という大きな値である。 上記の実験結果に、装置のエネルギー効率や経済性の観点をつけ加えると、超伝導マグネットを用いたテスラ級の強磁場で定常または準定常の回転プラズマを用いるシステムがもっとも有望であることがわかった。
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