研究概要 |
シクロヘキサンに沸騰還流条件を課すことによって進行する脱水素芳香族化触媒反応は,低品位熱をベンゼン水素化反応という化学エネルギーへ変換するプロセスでもあり,それは燃料電池を用い電気エネルギーに変えて回収される。本システムの鍵を握る触媒に炭素担持微粒白金ならびに白金-ルテニウム固溶体を用いたところ,顕著な脱水素芳香族化活性を示すことが明らかとなった。 高表面積活性炭(BET比表面積3100m^2/g)のミクロ孔(孔径2nm以下,細孔容積1.78cm^3/g)で加熱されて成長する,白金カルボニルクラスター錯体(〔Pt_3(CO)_6〕^<2->_5と〔Pt_<19>(CO)_<22>〕^<4->)を前駆体とする白金微粒子は,それぞれ平均径1.43と1.52nmで鋭い粒径分布を与え,かつ炭素担体粒子内に一様に分散した。表面積当りの触媒活性と芳香族添加物による反応阻害のそれぞれで,白金塩化物を前駆体とする浸漬法調製の白金触媒(同じ炭素担体)より優れていた。 白金-ルテニウム複合触媒の調製に,錯体イオン対〔Ru(C_6Me_6)_2〕^<2+>,〔Pt_3-(CO)_6〕^<2->_5を前駆体としたところ,同じ比率で中性クラスタ-Ru_3(CO)_<12>とアニオンクラスター〔Pt_3(CO)_6〕^<2->_5から調製した場合よりも,触媒活性はほぼ1桁向上した。後者の活性は白金単独のそれと大差なく,ルテニウム単独では触媒活性を示さない。分析電顕より,イオン対前駆体は粒径も組成もよく揃った固溶体(平均径1.4nm)を与えることが確かめられた。高機能複合触媒の新規調製法であって,興味深い。
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