研究概要 |
重水炉及び核燃料再処理を初めとして核融合反応実験装置などにおけるトリチウムプロセスでは,トリチウム濃度に依存した流路変更或は流量制御などのバルブ制御が必要不可欠である。特に高濃度トリチウムのプロセスでは,安全性の観点からもトリチウム制御システムの開発が重要な課題である。このような観点から,これまで高濃度トリチウムのin-situ測定に対する制動X線計測法の適用性を検討してきた。制動X線はβ線に較べ透過能がはるかに大きいために,トリチウムを格納している容器の材料が適当な厚みであれば容器内のトリチウム量を容器の外から直接測定することが可能となり,この測定法をトリチウムの流量・流路制御システムに応用すれば,動的状態にあるトリチウムのみに着目した新しい流量・流路制御システムの開発が可能となる。 先ず、制動X線発生・透過窓に関する感度の向上を目的とし、薄いベリリウム板に約80nmの金を蒸着した窓を製作し、この窓による測定感度を調べたところ、薄い金蒸着膜を施したベリリウム窓を用いることによって、放射線障害防止法で規制されている元素状トリチウムの空気中濃度限度(0.5μCi/cm^3)よりも低い濃度である0.1μCi/cm^3以上のトリチウム濃度を制御可能であると結論された。更に、流路変更の制御を目的として、制動X線検出器からの電気信号によるバルブの開閉動作を実際に確認するための試験装置を製作した。この試験装置で模擬トリチウムピーク発生装置を用いて制動X線検出器にトリチウム濃度分布を表す疑似信号を入力し、電動バルブの開閉動作状況を調べた。その結果バルブの開閉動作は、7〜54cm^3/minの範囲で流速に関係なく所定濃度でバルブの開閉動作が問題なく行われることが知られた。以上より、制動X線計測法に基づいたトリチウムを含む気体の流量・流路制御システムの製作が充分に可能であると結論された。
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