研究概要 |
有機ハロゲン化合物により汚染された土壌・地下水の浄化を最終目的として、本年度は、有機ハロゲン化合物分解細菌の検索、白色腐朽菌(Phanaerochaete chrysosporium)の利用とその酵素作用の解明、及び土壌、地下水の物理化学的な浄化方式としての土壌曝気法について検討を行った。得られ主な結果は以下の通りである。 1.(2,4-Dichlorophenoxy)acetic acid(2,4-D)及び(4-Chloro-2-methylphenoxy)acetic acid(MCPA)を炭素源として、土壌試料からそれらの分解菌の単離操作を行い、2,4-Dについて1菌株、MCPAについて3菌株を単離した。これらの単離菌はそれぞれの物質を唯一の炭素源として資化する能力を有し、また、基質分解実験において基質の減少に量論的に見合う塩素イオンの放出が認められたことから、基質分解過程においてほぼ完全な脱塩素反応が誘発されていることが明かとなった。2,4-D分解菌から得た粗酵素液自体による2,4-Dの分解は現時点では認められていないが、2-Chloropropionic acidに対するデハロゲナーゼ活性が存在することは確認できた。 2.Phanaerochaete chrysosporiumが有機ハロゲン化合物やアゾ染料の分解に有効であることは前年度に報告した。同菌体より抽出した粗酵素液はアゾ染料を短時間のうちに分解し、上記分解が酵素反応によるものと考えられた。また、活性が認められた同粗酵素液中のリグニンペルオキシダーゼとマンガンペルオキシダーゼのうち分解には前者がおもにかかわっていると推定できた。 トリクロロエチレンによる汚染土壌の土壌曝気法による浄化について検討した。有機成分が多い土壌では間欠ばっ気が効率的であり、浄化効率を高めるためには蒸気等の相対湿度が高い空気が有効であることがわかった。ただし、土壌中TCE濃度が低下した時点で微生物分解法等に切りかえる方が効率的であると考えられた。
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