研究概要 |
トリクロロエチレン等の有機ハロゲン化合物の土壌への収脱着、微生物による有機ハロゲン化合物の分解と土壌浄化等について実験的に検討した結果、以下の結論を得た。 1.気相からの有機ハロゲン化合物の収着特性は主に膨潤性粘土の性質により決定され、土壌含水率の上昇に伴う収着能の減少は、土壌成分の相互作用や各成分間の水の分布によって影響を受ける。また、フミン質により汚染土壌中での移動、即ち浄化が促進される。 2.気相から収着された有機ハロゲン化合物を再び気相に脱着することは比較的容易である。トリクロロエチレンによる汚染土壌について、土壌曝気法による浄化について検討したところ、有機成分が多い土壌では間欠ばっ気が効率的であり、浄化効率を高めるためには蒸気等の相対湿度が高い空気が有効であることが明かとなった。ただし、土壌中TCE濃度が低下した時点で微生物分解法等に切りかえる方が効率的であると考えられた。 3.土壌から2,4-D分解菌を1菌株、MCPA分解菌を3菌株を単離した。これらの単離菌は各物質を唯一の炭素源として資化する能力を有し、基質分解過程においてほぼ完全な脱塩素反応が誘発された。2,4-D分解菌から得た粗酵素液自体による2,4-Dの分解は現時点では認められていないが、2-Chloropropionic acid等に対するデハロゲナーゼ活性が存在することは確認できた。土壌浄化への適用についてはさらに検討中である。 4.担子菌類に属する白色腐朽菌Phanerochaete ChrysosporiumはMCPAなどの芳香族有機塩素化合物を分解可能であり、これは同菌体が有する酵素による作用と考えられた。また、重油とその成分であるフェナントレンを対象として水系、土壌系における分解実験を行ったところ、土壌系において分解速度がやや遅かったものの、いずれの系でも分解が進み、汚染土壌の浄化においても同菌の利用が可能であることがわかった。
|