研究課題/領域番号 |
05558095
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
齋藤 洋 東京大学, 薬学部, 教授 (00012625)
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研究分担者 |
阿部 和穂 東京大学, 薬学部, 助手 (60202660)
古川 照栄 岐阜薬科大学, 薬楽部, 助教授 (90159129)
木村 宏 滋賀医科大学, 分子神経生物学研究センター, 教授 (40079736)
西川 克三 金沢医科大学, 医学部, 教授 (10029960)
大村 裕 日本臓器製薬株式会社, 生物活性科学研究所, 所長 (30019517)
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キーワード | 線維芽細胞成長因子 / FGF / 神経再生・生存 / 遺伝子発現 / 記憶・学習 / 神経突起伸展 / 脳 |
研究概要 |
線維芽細胞成長因子(FGF)は培養脳神経細胞に対して強力な生存促進効果をもつことが明らかにされており、アルツハイマー型痴呆症などにおける神経細胞の壊死や機能障害を防ぎ神経細胞の再生を促進する効果が期待される。本研究は、FGFの中枢神経系における機能を、薬理学、生化学、神経形態学、生理学、分子生物学など多角的に検討し解明することを目的とする。本年度においては、まずFGFやその受容体に対する選択性が高い抗体を作成し脳内における局在を詳細に検討した。その結果FGF-1型受容体は脳内の広汎な部位の神経細胞膜に存在するが、グリア細胞には存在しないことが明らかになった。bFGFのN末端付近の向核シグナル配列が実際に機能し、FGFを発現していない線維芽細胞に注入すると核移行することを明らかにした。ラットの生後の発達にともない橋・延髄や間脳のaFGFが顕著に増加するが、AraCを投与しておいて神経構築を乱したラットでは増加しないことを明らかにした。さらに、PC12細胞の分化に伴いaFGF量が増加することを見いだし、FGFが神経回路網形成と密接に関連し、神経細胞の分化に寄与する因子である可能性が示唆された。マウスにブドウ糖を投与2時間後に受動的回避および水迷路学習を行うと記憶促進効果があり、それが抗aFGF抗体で抑制されることが明らかになった。aFGFを側脳室内投与しておくと虚血による海馬神経の壊死が防止され、記憶能力も正常に保たれていた。培養脳神経細胞にbFGFを添加すると、生存促進効果の他に、神経突起の分枝数を増加させる作用があることを明らかにした。この作用はレーザーを照射して神経突起を切断した神経細胞において顕著であり、FGFは軸索損傷時に新たな突起を形成させることにより再生を促す作用をもつ可能性が示唆された。以上の様に、脳神経系に対するFGFの様々な作用が解明されつつある。
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