神経回路、特に運動ニューロンの回路網形成の分子機構を明らかにするためには運動ニューロン全体、さらにはそのサブタイプに特異的に発現されている分子、たとえば細胞認識分子と標識分子を徹底的に捜し出す必要があり、分子生物学的手法がそれを可能にすると考えられる。胚からの材料採取が容易であり、かつ最も良く研究されているニワトリ胚の後肢を支配する腰部運動ニューロンを研究対象とし、蛋白質を電気泳動により二次元に展開して組織間で発現を比較出来るように、存在するmRNAを比較する方法であるmRNA Differential Display法(D-D法)による解析を今年度も継続した。その結果、34個のcDNAバンドを回収し、シークエンスしたところ、GluRなど既知分子が6個で他はホモロジーが見い出されなかった。D-D法の原理から得られたcDNAの多くは3'末端側であることからデーターベース検索にかからない可能性が高いため、次に、in situ ハイブリダイゼーションにより運動ニューロンに特異的な発現が見い出されたクローンから順に、より長いcDNAクローンをクローニングした。それにより、さらに数クローンが既知分子であることが明らかになり、また3クローンについては全長のcDNAを得た。これら3クローンは新規分子であり、個々の分子ごとにその分布パターンと構造、さらには機能解析を行ない発表する予定である。
|