研究代表者は、妊娠後期ラット、マウス胎仔をin vitroで生存させる経胎盤潅流法を、世界に先駆けて開発している。本年度の研究においては、この方法の改良を目的として、本研究の当初のプランをもとに新しい方式による培養装置の試作を行い、その基本性能についての多くの重要な知見を得た。すなわち、新しい培養方式は、経胎盤潅流法開発の当初より用いていて方法として確立している従来の潅流培養方式に比べ、構造的にかなり複雑になるが、十分に実現可能であることが明らかになった。またこの方法を用いて、比較的高価な培養液、ホルモンなどの使用が可能になりその結果、種々の栄養素、ホルモンの添加によって、胎仔の状態が大きく改善されることが明らかになった。また、経胎盤潅流法の発生神経科学への応用として、蛍光色素DiI等を、潅流中のラット胎仔の神経組織に局所注入して、特定のニューロンを順行性、逆行性に、生きたまま染色、蛍光ラベルする方法を開発した。このことは、経胎盤潅流法が、種々の細胞マーカー、トレーサーによる細胞ラベリング法と組み合わせることにより、ニューロンなど神経系の細胞の分化、移動、神経線維の成長などの研究に、広く応用可能であることを示しており、この方法が、哺乳類の発生神経科学的研究に、有力な手段であることを意味している。
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