本研究では、光学的測定法による中枢神経系の機能解析に新しい局面を開くことをめざして、光ファイバーセンシングの技術を取り入れ、新しい光学的測定システムの開発を行った。今回開発した光ファイバー測定システムは、照明装置、光ファイバー、蛍光測光装置、記録系の4つの部分から構成されている。照明装置は光源にタングステン・ハロゲンランプを用いた市販の光ファイバー照明装置を改造し、励起光としての準単色光を得る目的で干渉フィルター、干渉フィルターを熱から保護する目的でヒートカットフィルターを設置した。光ファイバーは、本装置用に特注で作製したもので、照明装置に接続する照明端、蛍光測定装置に接続する受光端、標本に挿入する測定端の3本をY字型にまとめたものである。今回は測定端を出来るだけ細く作ったもの(外径2.3mm)と、測定端の中央部分に、染色、薬物注入、刺激電極の設置等に用いる為の作業孔(内径0.7×1.2mm)を設けたもの(外径4.0mm)の2種類のファイバーを作製し、測定目的に応じて両者を使い分けた。蛍光測光装置は受光端の先に取り付け、ファイバーの受光端に接して励起光の散乱成分を取り除く目的でロングパスフィルターを設置した。今回は色ガラスフィルターを用い、使用する膜電位感受性色素に応じて、励起用の干渉フィルターとともに容易に交換できる仕組みとした。受光素子には予想される蛍光強度で最もよいとされるフォトダイオードを用いた。 試作した測定装置の性能を評価するために、まず摘出迷走神経幹標本を用いて測定を行い、装置の感度、ノイズレベル、シグナルのS/N比について検討を行った。これらの結果から、この測定システムは、感度、S/N比とも、活動電位の測定にはもちろんのこと、加算平均を行うことができない標本での測定や、複数の成分が含まれたシグナルの波形解析にも十分耐えられるだけの性能を備えていることが確かめられた。
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