研究概要 |
セメントインと命名した内在性の架橋接着因子を利用してタンパク質の糊付け技術を開発し実用化に結びつけるために必要なセメントインの量産系を組み立て、その精製法を確立するとともに、新しく発見したセメントインの同族分子(Pro-SPAI)についても,同様に大腸菌を利用した発現系とアフィニティクロマトグラフィーによる精製系を確立した。ブタのPro-SPAI cDNAを発現ベクターpMAL-pに組み込み、大腸菌に導入し、マルトース結合タンパク質との融合タンパク質の形でペリプラズムに分泌されるようにした。これをアミロース・レジンを担体とするアフィニティーカラムにかけ精製した。精製標品にファクターXa(プロテアーゼ)を作用させて、不要なマルトース結合タンパク質部分を切断除去し、ヒドロキシアパタイト・カラムに通すことにより簡便かつ効率よく目的物を得る方法を開発した。このようにして得たPro-SPAIは、予想通りトランスグルタミナーゼによって非常に効率よく架橋され、優れたタンパク質接着能力を有することが確かめられた。精製標品に対する抗体も得た。またブタの遺伝子の詳細な解析から、同族分子が他にも3種類存在し、合わせて少なくとも5種類の架橋接着因子が存在することを明らかにした。これらはいずれも3個のエクソンからなり、イントロンの配列を含めてそっくりな遺伝子構造を有し共通の先祖遺伝子から進化してきたことが示唆された。最初に発見し本研究のきっかけを作ったセメントインに関しては、基礎の観点からも興味深い知見を得た。すなわちヒトのある種の病態(Psoriasis)では,セメントインが異常に発現し、皮膚等の結合組織の病気になることが判明した。本研究対象である接着因子の基礎および応用の両面における重要さをよく物語っている。
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