研究概要 |
1.実験動物で盲腸結紮・穿刺と乾燥糞便散布により腹膜炎モデルを作成した。これを3群に分け,第1群は単純腹壁縫合閉鎖,第2群はチューブドレインを留置,第3群は腹壁を開放してここにポリプロピレンメッシュを縫合し,その網目からドレナージをはかった.さらにこの第3群をA,B群に分け,Aはメッシュをそのまま使用,Bでは表面にコラーゲンを固定したメッシュを使用した. 各群で生存曲線,血中エンドトキシン,TNF,及び血球数,肝機能,腎機能を調べた. また上記の腹膜炎モデルの代りに,腹腔にエンドトキシンを注入して同様の実験を行った. さらに第3群では腹壁の治癒経過を観察した.その結果,以下のことがわかった. (1)生存率は第3群(メッシュドレナージ群)が最も高く,他の2群は最終的に全例死亡した. (2)血中エンドトキシンもTNFもメッシュドレナージ群が有意に低かった.また腎機能は他の2群に異常な高値がみられたが,第3群では正常に保たれていた.以上よりメッシュドレナージは開放療法と同じく,腹腔の汚染物質を体外に排除し,腹膜炎による敗血症や多臓器不全の防止に有効であることが示唆された. (3)メッシュドレナージ群の腹膜炎消退後の腹壁創では炎症性反応や皮膚上皮の潜り込みはA群で少ない傾向がみられ,中にはメッシュの表面が完全に皮膚で被われた例もあった. 2.腹壁治癒の差を更に厳密に比較するために,家兎の背部皮膚に左右対照に円形の穴を開け,一方はコラーゲン固定メッシュを,反対側は無処置のメッシュを埋め,治癒状態を経時的に観察した. その結果コラーゲン固定の有無により開放創の治癒に殆ど差がない結果となり,現在更に実験を継続中である.場合によればコラーゲン固定を見直す必要がでるかもしれない.
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