研究概要 |
電子顕微鏡で,照射電子により試料から叩き出された二次電子のもつエネルギーは一様ではなく,粒子毎に異なるエネルギーをもつ.この異なるエネルギーをもつ二次電子を簡易的に分光するために,試料の直上に真空管のグリッドに相当する電極を設け,これをサプレッサーと名づけた.これにより,得られた二次電子のスペクトルで特に違いが明瞭な帯域を3帯選び,それぞれの帯域の二次電子強度を,光の3原色である赤,緑,青の輝度に変換して,ブラウン管上に表示すれば,カラー画像が得られる.そこで,黒鉱の研磨片を試料に,この方法による走査型電子顕微鏡像のカラー化を試みた.試料は,黄鉄鉱,黄銅鉱,閃亜鉛鉱,および珪酸塩の脈石鉱物などからなる.測定はサプレッサー電圧を0.2〜3.2V間で0.2V毎に16段階に分けて行なった.したがって,二次電子スペクトルは15帯域に分けて求めることができた. カラー表示に用いたディスプレイの輝度階調は,赤,緑,青とも0〜255までの256である.白黒濃淡図では,各画素の輝度は三原色ともすべて同じとし,その値は得られた二次電子強度の最小値と最大値の間を255等分して決めた.したがって,白黒濃淡図の分解能は256である.ところで,地形図ではしばしば高度の違いを,寒色(青や水色)から暖色(黄や赤)への色の違いとして表現する.この方法を採ると,全体の分解能は1021(=4・(256-1)+1:頂点は2本の稜に含まれる)である.したがって,二次電子の強度をカラー表示すれば,白黒濃淡図に較べて,分解能が約4倍に増えるはずである.そこで,この方法で,通常の二次電子像をカラー表示してみた.ところが,白黒濃淡図では判別できる黄鉄鉱と黄銅鉱が区別できなかった.この理由については,今後検討しなければならない.
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