この研究課題であるCr^<4+>:YAGを用いた1.3〜1.6μm領域の波長可変固体レーザーを設計、試作した。共振器構成はチタン・サファイアレーザーシステムを参考にして、4枚ミラー構成にした。数回の改良の結果、Nd:YAGレーザーの1.06μm光を励起光源とした波長可変固体レーザーシステムの試作に成功した。 5W連続励起の場合、試作したレーザーシステムの出力は最大で400mWであった。発振特性は本予算で購入した光スペクトラム・アナライザーを用いて調べた。複屈折フィルターを用いることにより、発振波長は1.39〜1.53μmまで可変であることが分かった。目的としている波長範囲より少々狭いが、これは使用している誘電体ミラーと、レーザー結晶の質の問題であることが分かった。現在誘電体ミラーと結晶を良質の結晶に変えることを検討中である。スペクトル幅は0.9A以下になることが確かめられた。またレーザー結晶の冷却系の改善により、出力特性が大幅に改善されることも判明した。現在、このレーザーシステムを用いて、光通信用の半導体素子として最も有望と思われているInGaAsP量子井戸の電子構造を調べている。 CWQスイッチNd:YAGレーザーで励起することにも成功した。平均パワー5W、パルス幅100ns、繰り返し3kHzで励起した場合、最大で150mWの出力が得られた。発振波長範囲は連続励起の場合とほぼ同じであり、スペクトル幅は2Aであった。この出力特性から判断すると、このレーザーシステムにより、GaAs系の超格子中の2光子共鳴過程を調べることは可能である。
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