前年度に引続きCr4+:YAGを用いた1.3〜1.6μm領域の波長可変固体レーザーの試作、改良を行なった。レーザー結晶を良質のものに変え、誘電体ミラーを2組用意することにより、発振波長は1.38μmから1.58μmの領域に拡大することができた。 励起光源であるNd:YAGレーザーをCW動作させた場合、8W励起でCr:YAGレーザーの出力は1Wまで向上していることが確認できた。このレーザーシステムを用いて、バンドギャップが1.5μm程度にあるInGaAsP量子井戸構造の電子状態を調べ、このレーザーがこの系を調べる最適のレーザーシステムであることを公表した。 CWQスイッチNd:YAGレーザー励起の場合は、5W励起で、最大で150mWの出力が得られている。そのときのパルス幅は100nsであった。繰り返し周波数は3kHzであるので、ピークパワーは500Wとなり、十分非線形光学現象観測のための光源になり得ることが判明した。現在、予定通りこのレーザーシステムを2光子共鳴分光法の光源として用いてGaAs/AlGaAs超格子の量子閉じ込め構造の解明を行なっている。特に、2P励起子状態で共鳴SHGの大きな増大効果が観測され、この方法がこの系の量子状態を解明するために非常に有効であることがわかった。 以上の成果が得られたので、カーレンズ効果を用いたフェムト秒パルス発生の試みも現在着手し始めた。共振器長を延ばし、石英のプリズムを2つ共振器内に挿入してフェムト秒パルスの発生を試みている。
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