研究課題/領域番号 |
05559009
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研究種目 |
試験研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
広領域
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
岡本 佳男 名古屋大学, 工学部, 教授 (60029501)
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研究分担者 |
市田 昭人 ダイセル化学工業(株)総合研究所, 研究員
猪爪 信夫 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 研究員
中野 環 名古屋大学, 工学部, 助手 (40227856)
八島 栄次 名古屋大学, 工学部, 助教授 (50191101)
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研究期間 (年度) |
1993 – 1995
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キーワード | 高速液体クロマトグラフィー / 多糖誘導体 / セルロースフェニルカルバメート / キラル充填剤 / 光学分割 / アミロースフェニルカルバメート / 不斉識別 / Enzymatic polymerization |
研究概要 |
1.フェニル基上の様々な位置に、メチル基とクロロ基やフルオロ基などのハロゲンを同時に有するセルロースやアミロースの2置換フェニルカルバメート誘導体を合成し、置換基の位置およびその種類の光学分割能におよぼす影響について調べた。セルロース誘導体では、メタおよびパラ位に置換基を有する誘導体が高い分割能を示したのに対し、オルト位に置換基を有する誘導体の分割能は低かった。一方、アミロース誘導体の場合は、セルロース誘導体とは異なり、オルト位に置換基を有する誘導体が、最も高い光学分割能を示した。 2.1.で合成した多糖誘導体の幾つかは、クロロホルムなどの極性の低い溶媒に可溶であったので、光学異性体と多糖誘導体とが相互作用している様子をNMRを用いて直接調べることができた。例えば、セルロースの3-フルオロ-5-、メチルフェニルカルバメート誘導体は、1,1'-ビ-2-ナフトールのS体と強く相互作用し、多糖との間で明確なNOE相関ピークが観測された。また、NMRによる滴定実験、緩和時間及びケミカルシフトの変化、コンピュータモデリングをもとに多糖誘導体と1,1'-ビ-2-ナフトールとの錯体のモデルを組立て、不斉識別のメカニズムを分子レベルで解明することができた。また、セルローストリスフェニルカルバメートおよびセルローストリス(3,5-ジメチルフェニルカルバメート)とトランス-スチルベンオキシドとの相互作用エネルギーを分子力場計算で見積ったところ、HPLCによる光学分割の結果を支持する計算結果が得られ、コンピュータシミュレーションもまた、不斉識別機構を議論するうえで有用であることがわかった。 3.キラル充填剤は、シリカゲルに多糖誘導体を物理吸着させて調製しているが、多糖誘導体が用いる溶離液に溶解する場合には、カラム充填剤としては使用できず、そのため光学分割できる鏡像体の種類、使用可能な溶媒が限定される。今回、酵素ホスホリラーゼを用いて酵素重合して得たアミロース誘導体の還元末端部位をシリカゲルとただ一点で化学結合させたキラル充填剤を調製することに成功した。様々のラセミ体に対する光学分割能をHPLCで評価した結果、この充填剤は、従来の吸着型充填剤と同程度の高い分割能と優れた耐久性の両方を兼ね備えた実用的なキラル固定相であることが分かった。
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