Brain Functional NMR Spectroscopyの開発-NMRによるヒト高次脳機能の無侵襲的計測技術の開発

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05559011
• 研究機関: 国立精神・神経センター
• 研究代表者: 荻野 孝史 国立精神・神経センター, 神経研究所, 室長 (50185526)
• 研究分担者: S Churchill SMIS(株), 機器開発部, 主任 ; 楠本 宗男 フィリップスメディカルシステムズ(株), 医用技術部, 研究員 ; 高橋 清久 国立精神, 神経センター・神経研究所, 研究員 (30073076) ; 杉田 秀夫 国立精神, 神経センター, 総長 (80009951) ; 矢野 登志雄 国立精神, 神経センター・神経研究所, 研究員
• キーワード: NMR / スペクトロスコピー / ヒト / 脳機能 / 無侵襲計測 / スペクトル編集法 / 多量子コヒーレンス / 画像化

研究概要

Brain Functional NMR Spectroscopyによってヒト高次脳機能を無侵襲計測するためには、従来のNMR計測技術に比べて信号検出感度のみならずNMRスペクトルの分解能を飛躍的に向上させる技術の開発が必要である。in vivo測定においては、とりわけ^1HNMRでは、狭い化学シフト範囲に多種類の相異なる代謝物質由来の信号が重なり合う。本年度は、このような場合にも測定対象となる代謝物質を選択的に検出することができる^1H同核種スペクトル編集法をグラジェント技術を応用した多量子コヒーレンス法を用いて開発した。さらに、新たに開発したスペクトロスコピック・イメージングパルス系列にこの多量子コヒーレンス・スペクトル編集パルス系列を組み込み、特定の代謝物質を選択的に画像化するNMR画像法を完成させた。また不均一なRF磁場を作るため多重パルス系列を組み立てるのが困難なサーフィス・コイルを用いても動作させられるようにスペクトル編集パルス系列に改良を加え、信号検出感度の向上を得た。これらの新技術の開発により、皮下脂肪由来の妨害信号が測定上の問題となる脳表近傍でも神経細胞の興奮に伴って生成される乳酸のNMR信号を特異的に抽出することが可能となった。本年度に開発したパルス系列はパラメータの調節によって、脳の機能的変化を支えると考えられる神経伝達物質アミノ酸を含む様々な代謝物質の選択的検出に応用することができる。また、皮下脂肪信号の混入を避けることが一般的には困難な骨格筋内の乳酸のin vivo測定にも適用可能である。

研究成果

• [文献書誌] K.L.Behar & T.Ogino: "Characteriazation of Macromolecule Resonances in the ^1H NMR Spectrum of Rat Brain" Magnetic Resonance in Medicine. 30. 38-44 (1993)
• [文献書誌] 高橋征三,荻野孝史: "ラット脳のCH2次元相関NMRスペクトルの解析" 日本磁気共鳴医学会雑誌. 13 SUP. 253 (1993)
• [文献書誌] 穴見公隆,矢野登志雄,高橋征三,荻野孝史: "^<31>P-MRSによる過呼吸負荷時のヒト脳代謝調節機構a検討" 日本磁気共鳴医学会雑誌. 13SUP. 125 (1993)
• [文献書誌] 花岡繁,矢野登志雄,荻野孝史: "^<31>P-MRSによる小児脳成熟過程の評価" 日本磁気共鳴医学会雑誌. 13SUP. 480 (1993)
• [文献書誌] 大仲功一,山口明,矢野登志雄,荻野孝史: "^<31>P-MRSによるヒト下腿筋の代謝的不均一性の研究〜トレーニングによる変化〜" 日本磁気共鳴医学会雑誌. 13SUP. 132 (1993)
• [文献書誌] 高橋征三,角野文緒,大久保七重,荻野孝史: "部位別脳組織内代謝物質の2D-NMRマッピング" 日本磁気共鳴医学会雑誌. 14SUP. 198 (1994)
• [文献書誌] 荻野孝史,矢野登志雄: "in vivo NMR(新生化学実験講座20 機器分析概論 所収)" 東京化学同人(日本生化学学会 編), 23(251-273) (1993)