研究概要 |
今年度においては,まず現象学の哲学におけるこれまでの「存在」概念を再検討した。存在の機能論的・構造論的意味を明らかにし,それを具体的に身体・意識・言語という存在領域のそれぞれにおいて解明した。これは,構造存在論の体系化の礎石となろう。例えば現存の最大の現象学者と思われるヘルマン・シュミッツの65歳・退官記念論文集に,この研究の極く一部が直ちに掲載された。(裏面を参照せよ。) 今年度における研究は: 1)これまでの「存在」の概念を現象学的・構造論的な観点から根本的に検討し,存在を機能と構造の観点において把握することを試みた。そして,機能と構造の観点から見られた存在の概念を存在者の全体としての「世界」の概念のみならず,また世界の個々の存在領域である身体・意識・言語の存在との関係において研究した。機能しつつ存在するということは,つねに依自的な自己存在を脱し去って,他のものに関わるということの内に示されるということが,身体・意識・言語の存在の次元で明らかにされた。 2)実際には,フッサールの形式的存在論・領域存在論の思想,ハイデガーの基礎的存在論及び存在への問,さらにシェラーの「認識とは存在関係である」というテーゼ,メルロ-ポンティの後期の「肉」の存在や所謂内部存在論に検討を加えた。これらを,特にヘルマン・シュミッツの身体現象学やロムバッハの構造現象学などのドイツの現代の現象学における存在の概念と対比した。
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